UNDER WORLD






 また今日の朝も変わらず登校か。
「おはよぉ!イリア。」
歩いている途中、いきなり元気よく話しかけられて、自分はついていけてない。
こんな眠すぎて仕方ないのに…こんな元気に話しかけられると、本人にはかわいそうだが、自分には安眠妨害されているようだ。
起きているけどさ。
「…ルナ、元気そうだね。」
「んふふ〜、明日の夜に吸血鬼様がお目見えになると思うと、もうドキドキさぁ!」
さぁっと、自分の頭に血が引いてる感じがする。
自分が殺されるかもしれないのに、違う方向に走れるのが彼女のすごいところか。
「…血を吸われて殺されちゃうのに??」
「あはは〜!それも楽しいかもね。魔法で撃退できるか試してみようかな?」
出た、オカルトオタク。
ルナは学校有数の美人だと謳われるが、この一面を知る人はごく一部だ。
知ったら、まず、ついていけないだろう。
「はぁ…」
隣で笑うルナに疲れ、とぼとぼと重い足取りで学校へ向かう。
『イリア、彼女ついてきてないわよ。』
「え?」
いつも聴く声に足され、後ろへ振り向くと…
「朝刊くださーい。あ、あとミスファンも!」
※ミステリー&ファンタジー。彼女の愛読書である。内容は題名が痛いぐらいに表している。
「…………。」
そんな彼女の姿を見て、ハァ…と溜め息。
『そんなに溜め息ばっかりしてると、老けちゃうわよ。』
「老けるよ、もう…こんな生活してたら…」
前を向きなおし、また溜め息。
力なくまた歩き出すと…
どーんッッ!
「うぉっち!!」
後ろから押されてつまずき、持ちこたえようとしたところで身体が宙に浮いた。
結局は、一秒も持たずに落ちたのだが。
「痛ッッ…」
「んふふ〜、アタシのタックルきいたぁ??アタシを置いて先に行っちゃうからよ。」
『ぁ…ぁゎゎゎゎ…』
ルナが見下したアングルでしゃがみ込んだ。
地に着けていた顔を少し上げると…
………ぁ。
「ルナ、中見え…」
真っ赤なイリアの顔と、同じく真っ赤なルナの顔。
「バカ!!!」
スカートを抑えながらルナが足を上げる。
……!!!
「ふぐっ…!」
頭を踏まれた。ガリッって嫌な音つきで。
「べ…べべ別に…」
「もういいわよ。」
なぜか早足で彼女はすたすた行ってしまう。
「遅く来るなら来なさいよ、このままじゃ遅刻なんだから!!」
「!!!」
もともとは誰のせいで遅刻になるんだ、と頭で考えつつ、早足で彼女を追いかけた。

 自分たちが学校に着くと、すぐに授業が始まった。
遅刻をしたわけではないが、なぜか視線が痛い。
「今日は、日々の役割を決めるはずだったのにな。」
じろじろと睨まれ、こちらも負けじと睨み返す。
「ごめんなさい、私がイリアを遅くさせちゃったの。」
「ルナちゃんはいいんだよ。」
あ、出た、差別用語。
全く、平等じゃないから困るんだよな。
ここは。
「大体、それは事前に教えるべきだろ?今聞かされてわかるはずがないだろうが。」
完璧やつらにハメられた。
にたにた笑ったツラが、いっそう腹立たせる。
「ちょっと待って、昨日、イリア君に言うといったじゃないか。」
いきなり誰かが席を立ち、彼らに言う。
弱弱しい頼りない声で。
「評議員は黙ってろ。」
そう彼らにすごまれて、彼はちょっと、ビクついたようだ。
「こいつらが俺に言うはずがないな。」
イリアは別に怒った様子もなく普通に言った。
コレもパターン化してきつつある展開ゆえに、別に怒ることも驚くことも無かった。
もうなれたっつうの。
「全く、人をこんな目に合わせて何が面白いんだか。器が小さいな。」
イリアがお返しの一言。
「何だと?!表に出ろ!!」
これだから困る。
すぐこうやって片付けようとするんだから困るんだ。
こういう、外見ばっかりでかくて、中身のないやつは。
どうしてこんな奴らと同じクラスなのか理解に苦しむ。
こんな力しかなさそうな奴は隣の1stクラスに行けば良い。
簡単に説明し過ぎると、1stクラスは事務、2ndクラスは魔術と重点が違う。
俺のクラスは当然2ndクラスだ。
クラスについてはまた違う機会に詳しく説明しようと思う。
「だ、ダメだってば、後日決めればいいじゃないか、そうだな、明日にずらそう。」
「評議員はおとなしくしてろ!」
またまたビクつく評議員。
なんか、可哀想に思えてきたぞ。
「もういいからさ、さっさと実験室行こうよ。明日すればいいじゃない。」
「ルナちゃんが言うなら…」
な…なんだコイツは……
ルナのことならすんなり許しやがって…

「大丈夫?クレストくん。」
クレスト・ヴラディア。
それがこのクラスの評議員の名前だ。
ベージュの髪の色をした、イリアと同じぐらいの背の高さの少年。
この歳の男性の平均身長よりすこし高めというくらいか。
コレといって目立った特長は無く、きっとお約束的に頭が良いんだろうな。
「う、うん、ありがとう、オリビアさん。」
オリビアはもちろんルナだ。
ルナ・オリビアという。
「クレスは絡まれやすいからなぁ。」
「セイクリッド君ほどじゃないけどね。」
「……う。」
言い返せないのが、とても痛かった。
まさに、その通りなのだ。
日々あんな奴らに絡まれすぎて、もう人と張り合うどころじゃない。
「オリビアさんは強いよね。」
「え?そーかなー」
…あの野郎がルナにベタ惚れで、甘いだけだと思うが…
まあ、ルナは強いよな。
「ルナは吸血鬼を倒すとか言ってるしね。」
「………ぇ?」
気の抜けたクレスの声を聴き、これは、ちょっと引いてるかな?とイリアは感じた。
まず、思ったとおりの反応だが。
「も…もう、イリアったら…アンタが倒すんでしょ?」
「はぁ?!!」
全く話に無かったことを振られ、声がそのまま飛び出した。
バシン!とルナから背中を叩かれ、ゲホゲホ…と、独りで噎せていた。
「っつ。」
俺は、そんなこと出来ません。
というか、しません。
「面白いね、二人は。」
イリアはちょっと涙目になっている顔を上げる。
「?」
そして、数秒、クレスの顔をまじまじ見つめた。
「?どうかした?」
「いや、クレスって、タバコ吸ってる?」
「は…はぁ?」
そう言われた彼は意味がわからないと言いたさげに、こちらを見る。
「アンタも、優等生なおかつ評議員にそんなこと聞くのは可笑しい気がするけど?」
ルナが馬鹿にしたように自分にそう言い、後から少し笑った。
そのままクラスのほうに彼女は帰っていく。
「特に意味は無いんだよ、うん。」
独り勝手に納得し、独り勝手にうなずいた。
吸ってると思ったんだけどなぁ。
…タバコ




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